1、歯科治療では白い被せものを選びたい!これまでの選択肢をおさらいしましょう
これまで自由診療でしか治療を受けられなかった”ハイブリッドレジン”での差し歯治療が、2014年4月より条件付きで保険適応になります。
金属の被せものだと見た目が悪いし、自分の歯を治療するならやっぱり白い被せもので治療したいですよね。
前歯部分に白い歯で被せものを作るには、従来まで以下のような選択肢がありました。
- 硬質レジン前装冠(保険適応)
- 硬質レジンジャケット冠(保険適応)
- コンポジットレジン充填(保険適応可)
- 陶材焼付鋳造冠(自費診療)
- ハイブリッドレジン前装冠(自費診療)
- ハイブリッドレジンジャケット冠(自費診療)
- オールセラミック(自費診療)
1−1硬質レジン前装冠(保険適応)について
表面に硬質レジンを築盛するため、正面から見た場合は白い歯に見えます。
内面と裏側には金属を使用するため、大きく口を開けると金属が見えてしまうことも・・・
犬歯(3番)から反対側の犬歯までの計6本までが国民健康保険が適応される範囲です。
1−2硬質レジンジャケット冠(保険適応)について
全体を硬質レジンで作るため、大きく口を開けても金属が見えるようなことはなく、金属アレルギーの心配がありません。
ただしレジン製のため強度が弱く、時間が経つと変色してしまいます。
犬歯(3番)から反対側の犬歯までの計6本までが国民健康保険が適応される範囲ですが、歯科医師が噛み合わせの力に耐え得ると判断した場合は、小臼歯部(4番、5番)まで保険が適応されます。
1−3コンポジットレジン充填(保険適応可)について
CRやダイレクトボンディングとも呼ばれていますが、歯牙に直接レジン材料を築盛する方法です。
そのため小さな虫歯であれば白い歯で修復することが出来ますが、歯科医師の技術により仕上がりの精度が大きくことなります。
保険でCR充填治療を行う歯科医院と、自費診療で行う歯科医院があります。
1−4陶材焼付鋳造冠(自費診療)について
表面にセラミックを焼き付けるため、正面から見た場合は白い歯に見えます。
また、裏側も大部分をセラミックで覆われるため、大きく口を開けても金属は気になりません。
自費診療です。
1−5ハイブリッドレジン前装冠(自費診療)について
表面に硬質レジンを築盛するため、正面から見た場合は白い歯に見えます。
また、裏側も大部分をハイブリッドレジンで覆われるため、大きく口を開けても金属は気になりません。
自費診療です。
1−6ハイブリッドレジンジャケット冠(自費診療)について
全体をハイブリッドレジンで作るため、大きく口を開けても金属が見えるようなことはなく、金属アレルギーの心配がありません。
ただしレジン製のため強度に不安が残り、時間が経つと変色してしまいます。
自費診療です。
1−7オールセラミック(自費診療)について
強化ガラスやアルミナ、ジルコニアなどでフレームを作り、セラミックを焼き付けるため、大きく口を開けても金属が見えるようなことはなく、金属アレルギーの心配がありません。
強度、審美性、生体安定性に非常に優れていますが、治療費が高額になります。
自費診療です。
2、国民健康保険が適応される、白い歯の新しい選択肢”CAD/CAM冠”
2014年4月より新しい保険制度がスタートし、ハイブリッドレジン製の白い被せものに国民健康保険が適応されます。
これによって、白い被せもの治療を安く受診できるようになりました。
それが保険の『CAD/CAM(きゃどかむ)冠』と呼ばれるものです。
このCAD/CAM冠は、これまでのように人間が手作業で製作する補綴物ではなく、コンピューターで設計し、コンピューターで削り出すことによって製作される補綴物です。
そのため人件費などのコストが抑えられ、職人的な技術力も必要ありません。
一塊のブロックから削り出されるため、物性も安定しやすく、強度も比較的高いです。
CAD/CAM冠は上述した従来の選択肢から言うと、1−6ハイブリッドジャケット冠に近いです。
ただし見た目の美しさという点では、従来通り歯科技工士が手作業で製作したものの方が優れているようです。
CAD/CAM冠の保険適応範囲は、現在のところ小臼歯(4番、5番)のみですが、白い歯で保険治療が受けられるということは大きなメリットと言えるでしょう。
保険の白い歯”CAD/CAM冠”まとめ
2014年4月時点での条件
・小臼歯部に限られる
一番手前(真ん中)にある前歯を『1番』、犬歯を『3番』、一番奧にある臼歯を『7番』、親知らずを『8番』としたときに、『4番』『5番』の歯牙が小臼歯です。・単冠の全部被覆冠に限られる
『4番』『5番』を連結させることは出来ず、インレーなどの詰め物には適応されません。・CAD/CAMで製作されたものに限られる
歯科技工士の手作業で製作された”ハイブリッドレジン”には適応されません。・ジャケットクラウンに限られる
保険適応は指定のブロックを注水下で削り出したもの。
金属の裏装などは不可。・1歯あたりの患者負担の金額はおよそ8,000〜10.000円程度。
3、【業界裏話】なぜいま白い歯が保険適応されるのか
CAD/CAMの進歩によって、これまで不可能だった技術がこの数年で確立されてきましたが、なぜいまになって白い歯の保険枠が設けられたのでしょう。
CAD/CAM冠によって作られるハイブリッドレジン材料は、ある国内メーカーによって数年前から研究が進められたもので、実現可能な段階が来たという理由もあります。
ですがCAD/CAM冠の保険の適応という事実の核心を突くと、これは金属による医療費の圧迫を、国が切りたがっているからに他なりません。
パラジウム合金の使用量の計算が合わない上に、国の負担が大きくなり過ぎてしまっているのです。
そのような経緯で登場した保険適応CAD/CAM冠の白い被せもの。
スタート直後であるため確かなことは言えませんが、おそらく適応範囲も広がっていくのではないでしょうか。
”銀歯を撤去しリサイクルに出すことでお小遣いにする”といった歯科医院の困った風習も減っていくかもしれません。
今後はハイブリッドレジンで作られる保険適応CAD/CAM冠の白い歯が、金属に代わる材料として広く普及していくことでしょう。
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